住めば都の風が吹く

楽しいことの日記です

ふいに流れて嬉しい歌

 

 

 

 大体いつ頃に退院しましょうという話がついた。生活に張り合いが出るだろうということで。

 喜んだけど、あと何十日もいたくない場所にい続けるってすごくつらいと思って泣いた。大人になっても泣く。わんわん泣く。えーんとも泣いた。

 病院が悪い場所というわけではなくて(もちろん良い面もあれば悪い面というか私に不都合な面や物や人やシステムとの相性もある)、「望んでいない場所にいるしかない」という状況がこたえる。

 では私はどこに身を置けば満足がゆくのだろうか? ずっと答えが出ないし、そういうものだと思っていたけど、答えを出したい。自分のために。

 

 

 

 昔のことだ。小雨が降っている日にフォロワーが細野晴臣の「悲しみのラッキースター」をシェアしていた。それからずっと雨の日にはこの曲を聞いている。

 晴れていても悲しい時に流す。優しくて甘い声がさらさらとからだを通り過ぎる。歌詞がおいしい水のように染み渡る。

 思いがけない時に聞いても嬉しい。音楽アプリのプレイリストをシャッフル再生する機能で流れてくるとそれまでよりちょっとだけ気持ちが上向く。私はたいてい気落ちしている時に音楽を聞くから悲しみにそっと寄り添ってくれるようなこの曲が好きだ。

 なんとなく、不貞腐れている人の手を陽気な人がそっととって、くるくる踊っている光景が浮かぶ。

 

 

 

 細野晴臣といえば、はっぴいえんどにも救われたことがある。

 病気でひどくまいっていたときかすかな物音にも怯えてどうしようもなかったのだけど、なぜかはっぴいえんどの「風をあつめて」だけは聞けた。再生している間は他の音を聞かずに済むのでぐるぐるそればかり聞いた。

 頭がずっとぼーっとしていたので歌詞はわからなかった。しばらくしてから「コーヒーやで〜」といきなり関西弁になったな……と思っていた部分が「人気のない 朝の珈琲屋で」だったことに気がついた。

 そのあたりからMONO NO AWAREの「東京」も聞けるようになって、ちょっとずつ回復した。

 

 たぶん、すごく細野晴臣の声が好きなんでしょう。